部室に二人―――



   [ 幸せ ]


   「・・・」

   木戸野亜紀は絶句する。
   朝部室に来てみれば魔王陛下こと空目恭一が寝ていたからだ。

   「珍しいこともあるもんだ・・・」

   おもわず呟く。
   空目は本を開いたまま下にし、机に突っ伏して寝ていた。
   このままでは痕がつくと思い、本をそっと取りしおりを挟んで本を閉じる。
   そして本を置くと、空目の横の寝ている机に寄りかかる。

   改めて見てみるとやはり空目は綺麗だ。
   うつ伏せになってるせいであまり見えないが、少し横を向いているので目が見える。
   それでも綺麗だと分かる。
   特に何もいじってないだろうに真っ黒でさらさらの髪。
   白く荒れのない肌。
   それに今は目を開いていないのでいつものきつい感じもない。
   少しこれには羨ましくも思う。

   サラッ・・・

   「・・・・っ!?」

   おもわず手を引っ込める。
   無意識のうちに空目の髪に触っていた。
   起きてないことを確認すると安堵の息をつく。

   (何やってんだか私は・・・)

   今度は違うため息をついた。
   近くの窓の傍に寄る。
   いつもは本が傷まないように開けない窓だった。
   その窓を開ける。
   朝の気持ちのいい風が入ってきた。
   サラサラ、サラサラ
   亜紀の髪を揺らす。
   空目の方を見てみると空目の髪も微かだが揺れている。

   自分の髪を見てみる。
   茶色い髪。
   稜子とは少し違う。少し焦げのかかった。
   前に稜子に綺麗だといわれた髪。
   亜紀は黒の方がいいと答えた。
   それは今でも変わっていない。
   亜紀にとっては茶色よりも黒の方がよほど綺麗に見えた。

   『好きな人の色だから―――』

   まだ空目は起きない。
   よほど眠かったのだろうか?
   いつもの敏感さのかけらもない。
   本当はもう少しこのままでいたかった。
   しかし・・・
   時計を見る。
   もうすぐ皆も来るな・・・そう思い起こすことにした。

   「恭の字・・・?」

   名前を呼び、肩を軽く揺する。

   「ん・・・・」

   少し顔を歪め空目は目を開いた。

   「おはよう。恭の字。」

   「・・木戸野か・・・」

   空目は頭を起こし目を軽く擦る。 
   いつもは見ないこの行動に少し可愛いと思ってしまう。
   自分でも馬鹿みたいだと思うけれど思うものはしょうがない。

   「もうすぐ村神が来る時間だったから起こしたけど・・・
   起こさない方がよかったかい?」

   「いや・・・すまなかった・・・。本を読んでる途中で意識がとんだようだ・・・。」

   まあ私には迷惑かかってないからいいけど・・・。
   などと他愛もないやり取りを交わす。


   きっとこんな他愛もない毎日が幸せなんだろう――――


         xx終xx


   空目×亜紀書こうと思ったらなんだか亜紀×空目っぽく・・・(汗)



     [word by 一樹]