SPA!臨時増刊2003新・猛虎伝説
[対談] タイガースの未来はオレたちが作る




  ――今シーズン絶好調のタイガース打線にあって、繋ぎ役としてのお二人の貢献は、高く評価されています。
    で、繋ぎ役といえばバントは欠かせませんが......。

  赤星 来たなー、バントがー。

  藤本 その話は危ないでしょう。失敗の数、僕がいっちゃん多いんすから。

  赤星 お前はいいよ、まだ。
      俺なんか巨人戦で、2試合続けて(5月30日、31日)大事な場面で失敗して......。
      2試合目のノーアウト一、二塁の送りバント(注:小飛球になったが、ダッシュしたファースト・福井がはじき、
      ノーアウト満塁に。その後打線が爆発して結果的に一挙、11点を奪う)は、前の日に失敗してなければ、
      もっと気楽にいけたと思うんだけどなあ。
      「あれを落としてくれたのはお前にはツキがある」って、みんなには慰められたんですが......。

  藤本 僕、テレビで見てましたけど(注:5月27日に左ヒザ炎症で登録抹消)、
      福井さんが一瞬画面から飛び出てきたと思った(笑)。

  赤星 俺、視界になかったんだよな。福井が飛んできたのは。

  藤本 バレーのアタッカーみたいだった。アレ、おもろかった。赤星さんの泣きそうな顔が。

  赤星 泣きそうになるわ、俺も。取られてたらベンチ帰れんかった。
      (フライが)上がった瞬間、バットで叩き落そうかと思ったわ。

  藤本 気持ちわかるわ。

  赤星 シャレにならんて。


  バント失敗は技術ではなくハートの問題


  ――翌日のバッティング練習はずっとバントしてましたね。

  赤星 あのときは監督に声をかけられました。
      「お前、失敗した理由わかってんのか」って言われて「構えとか技術の問題やない。こっち(ハート)や。
      できるんだよ、お前は。ヘタじゃないんだよ」って。で、最後に「わかった?」

  藤本 うわ、それ聞いて余計失敗できんようになった。

  赤星 和田さんにはご飯連れてってもらいました。
      特に和田さんは同じタイプで、2番をずっと打ってた方だし。「俺にもそういうことがあった」と。
      開幕戦でバント失敗したらしくて、しかも初球空振り。そこから5,6試合はずっとバントできなかったらしいよ。
      やっぱバントって精神的なものが一番大きい。
      僕たちは子供の頃からバントやってるんだから、技術がないわけじゃない。
      今は逆に開き直って、失敗したらしょうがないくらいの気持ちでやってます。

  藤本 僕も失敗した後、一生懸命バント練習してたら岡田コーチに
      「練習しても一緒や。今までどれだけバントしてきたと思っとるんや」って言われて、
      「ああ、そうやな」って開き直れた。そしたら、ちゃんと転がるようになった。

 ――バッティングそのものは、お二人とも絶好調ですよね。

  藤本 去年までやったら、バット長く持ってちょっと長打狙おうかなんてね。
      でも、あれだけショート陣がいると、とにかく1本でも多くヒット打って目立たなアカンから、
      ボールに食らいつこうとバット短く持つようにしただけなんですけど。
      あと、去年は結構エラーが多かったんで(苦笑)、岡田さんに「守備をキッチリやってればいいから」って言われて、
      守備から取り組んだお陰で守りに不安がなくなり、気持ちよく打席に入れるようになりましたね。

  赤星 俺は金本さんが来るってことで、普通に考えたら出られない状態でした。
      秋の時点で、新聞にも今季のオーダーで俺の名前は全然出てないし、しまいには代走要員とか書かれるほど。
      "センター濱中(赤星)"ならわかるけど、"代走要員・赤星"ですよ。
      でも、守備と走塁だったら絶対負けないと思ってたんで、3割バッターになれば使ってもらえるだろうと、
      フォームも変えて賭けに出た。それが裏目に出たら今の俺はなかったですよ。
      まあ、いいほうに出るとはオープン戦の時点で確信してましたけど。
      だから、ある意味スポーツ新聞には感謝してます。

  ――現時点(6月22日)で首位打者。

  赤星 出来過ぎですけどね、それは。やっぱ3割が最低限の目標。
      むしろ今、出塁率が4割越えてるから、そっちにこだわりたい。打率は二の次というか。

  藤本 もっと小さく構えればいいんですよ。

  赤星 そしたら打たれへんやん。

  藤本 死球があるやないですか。

  赤星 まあ、そうやな。そういえば最近、当ててくれなくなってきた。
      俺、今5,6個当たってるけど、そのうち3つは当たりにいってるもん。
      それは大学のとき鍛えられました。僕、"当たり屋"でしたから。清原さんも逃げませんよね。
      当たりそうにない球が当たっちゃうんだから、相手からすると怖い。ある意味脅迫ですよ、あれは(笑)。
      でも、俺もそのくらいの気持ちで打席に立ってるんで、近いとこに来たら簡単には避けたくないな。
      塁に出るのが先決だから。

  ――藤本さんも定位置争いは熾烈でしたね。

  藤本 僕も新聞に「ショートが一番頼りない」とか載ってて、黙ってられるわけないじゃないですか。
      僕ももう26歳ですから、そろそろポジション取らんとクビも危ないし、
      キャンプ前から「命懸けでいくぞ」って考えてました。

  赤星 周りから見ても違ったな。

  藤本 新聞記者にもあまり喋らなかったですもん。
      聞いてくるじゃないですか、「今日は久慈さんとノック受けましたか」とか。
      僕は「いや、人は人なんで」って、これしか言わなかった。

  赤星 久慈さんが入って、藤本は相当プレッシャーかかったと思う。

  藤本 正直、新聞に久慈さんが来るって書いてあるの見たときは、「来るな来るな」って心の中で叫んでました。
     「ショートはもうええやろ」って(笑)。

  赤星 新聞でも、久慈さんが開幕スタメンって書いてあったな。

  藤本 去年、日変わりの先発ショートに慣れてて、今思うとそういう自分が情けない。
      左ピッチャーが先発すると、出られないのが当たり前という気持ちになってましたから。
      「失敗したらどうしよう」って、試合に出るのが怖い部分もありましたからね。
      今年は「出してくれ」って感じですから。ケガで登録抹消されたときも、ゴネてゴネて。
      10日は長かった。テレビ観戦もつまんなかったですよ、赤星さんのバント以外は(笑)。


  10年後も盗塁王を獲る気持ちでやりたい


  ――赤星さんも去年はケガで苦しまれました。

  赤星 3か月ですからね、僕は。

  藤本 ホント、病人やったもん。

  赤星 去年まで寮生で、藤本の部屋が真ん前だったんですよ。
      たまに来てくれるんだけど、「どうしたんすか!?こんな真っ暗にして」とか言われました。

  藤本 ビックリしたわ。目疑ったわ、あの部屋だけは(笑)。

  赤星 大体、カーテン閉めてたからな。引きこもりの人みたいに。

  藤本 動けんから部屋きれいやったやん。いつもやったら汚いのに。

  赤星 でもケガを怖がってはプレーできないですから。
      昨日の藤本みたいに落球して足がボキッとか、そんなんやったら格好悪いけど。

  藤本 えっ、あれ俺の落球になってんねや。

  赤星 あれ、どっちかがジャンプして取らなアカンな。

  藤本 ジャンプしても金本さんだし、跳ね返されそうですやん。

  ――金本さんは100%自分が悪いって言ってたそうです。

  赤星 でもベンチでは「何しよん、お前は」って言ってましたよ(笑)。

  藤本 いや、帰りのバスもですよ。「邪魔すんなや」って(笑)。

  ――二人とも将来のタイガースを背負っていく選手です。5年後10年後はどうなっているでしょう。

  赤星 プロに入ったからには、せめて10年はやりたい。
      やるからには、10年連続で盗塁王獲るくらいの気持ちでいきたいです。
      逆に、盗塁できなくなったら諦めるくらいの決意でやっていきたいです。

  藤本 自分の守備位置から考えて、10年やって34で守れるかなって不安もあるけど、逆にその年で守れるようやったら
      一流選手になってるかなという自分の夢があるから、そこに挑戦していきたい。
      ヤクルトの宮本さんには憧れますね。

  赤星 で、お前はフライ取れなくなったら終わりやな(笑)。

  藤本 んなアホな。昨日で終わりやん(笑)。





  同期入団で年も1つ違いの赤星と藤本は、友達のように軽口も交わす。
  その絶妙のコンビネーションは、明るいタイガースの未来を築いてくれるに違いない。
  これで10年後も安泰だ。