【Vカウントダウン】藤本の仕草に見えるナインの自覚
何げない光景に強さを感じることがある。
その時、至上の喜びを覚える。
23日のヤクルト戦。ベンチでの藤本の“プレー”に、星野監督はチームの底力を痛感した。
0−0で迎えた九回裏。このイニングの攻撃は、4番・八木から始まった。
打席に向かうベテランを追いながら、ふと隣を見た。
藤本がヘルメットをかぶって、待機していた。
「八木が出塁すれば、自分に代走で声がかかると思っていたんやろうな。嬉しかったなあ」
控えの選手なら、いつ出番があってもいいように準備するのは、当たり前。それが自分なりのリズムにもなる。
しかし、この夜は“ホリデー打線”を組み、矢野、桧山、片岡同様、藤本に休養が与えられていた。
久しぶりのベンチスタート。普通なら気が抜けても、おかしくないが、藤本は違った。
「代走で点が入らなくても、その後にショートに入ってオキ(沖原)がサード。
ジョージ(アリアス)が(八木に代わって)ファーストに入るということも、わかっていたんや、アイツは…」
結果は八木が三振に倒れて、出番はなかった。
ただ、『備え』の部分を重要視する星野監督にとって、チームの成長を実感する瞬間だった。
「こういう部分は、教えられてできるモノではない。
試合に入り込み、試合の流れを的確に読んでいたから、準備をしていたんだと思う」
たとえ赤星でも、同じように待機していたはず。
貯金39で、マジックは38。この2つの数字は、偶然の積み重ねではない。
藤本に代表されるナインの自覚の産物だった。
2カ月半ぶりの名古屋。星野監督は宿舎に到着後、夜の街へと消えた。
久しぶりの空気を味わうと同時に、初心を思い出していた。
「タテジマを着た時に、『絶対にこのチームを強くしてやる』と思った。
まだまだこれからやけども、オレのやり方は間違いではないということが、ようわかった」
V逸という悪夢に悩まされ、眠れない日々が続く。
それが初めて経験する喜びへの産みの苦しみだと思うからこそ、我慢もできる。
やるべきことは、何もない。
可愛いナインが夢のゴールへと導いてくれる。
サンスポ.com7月25日付