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念願のセントラル・リーグ制覇を成し遂げたタイガース。 今年のレギュラー格の選手の中では最年少となる藤本敦士選手だが、 今年のシーズン前にそのポジションを保障されていたわけではなく、 今年のレギュラーポジションは激戦を通して自らつかみ取った勲章である。 結果、子供のころから夢だった「優勝」に手が届き、打率3割というおまけまで手に入れた。 もちろん、来年以降が安泰というわけでないことは、本人も重々に心得ているし、周囲からも更なる飛躍を期待されている。 そんな藤本選手にセ・リーグ日程終了後、今年を振り返ってもらった。(取材日10月15日) 祝・3割達成 ――まずはリーグ優勝と打率3割到達、おめでとうございます。 ありがとうございます。 ――ここで今年のペナントレースを振り返っていただきたいのですが、今年のシーズンは藤本選手にとって長かったですか? それとも短かったですか? 終わってみれば長かったなー、というのが正直な感想ですね。 ――シーズンを終わって規定打席に到達するということだけでも大変なことですし、 その上で3割の打率が残せたことについては、自分でどう思いますか? 初めは3割というより規定打席に到達することを目標にやってきましたからね。 規定打席に到達できずに3割の数字を残すより、到達して二割九分台のほうがいいと思っていましたから、 その両方が達成できてよかったと思います。 とりあえず先に規定打席がクリアできたので、そこでひと段落つきましたけどね。 ――3割いけそうだな?と思ったのはいつぐらいから? そうですね、チームがマジック2で連敗していて、なかなか優勝が決まらなかった時ぐらいですかね。 自分自身は調子がよかったんですよ。 まだその時は二割八分台だったんですけれど、徐々に打率もあがってきてたんで。 ――最後は10月10日の最終戦で2安打すれば到達、という状況だったわけですけれど、 普通に考えればすごくプレッシャーもあったのではと思うのですがどうでしたか? 最終戦の前の巨人戦(10月7日)の時にかなり力が入りすぎて、3打席凡退したんですよ。 そして最終戦の第1打席もヒットが出ていればその時点で3割に乗っていたんですけれど、 やっぱり力みがあって簡単に三振してしまったんですよね。 そこで自分自身で開き直れましたね。 「目標が上になりすぎたなー」というか「もう、なるようになるやろう」って思ったのが、いい方向に向きましたね。 ――結局最終戦で2安打して、402打数121安打で打率.301。 他にも数字を見ていくと、三振数が42と極端に少ないですよね。 規定打席に到達している中ではチーム内ではもちろんセ・リーグ全体で見てもいちばん少ないですが。 春先からバットを短く持ってコンパクトに振ることを特に意識してきましたんで、今までよりかはちょっとだけでも ボールを呼び込めるようになったので、見極めもできますし。 あとは何とかバットに当てようと。 「三振よりかは前に飛べば汚いヒットでもあるかもしれないし」という意識で、今年はそういう結果になったのかなと思います。 開幕ダッシュ ――開幕前には決してポジションが約束されているという状況ではなかったですよね、 というよりショートはすごい激戦区だったわけですが、そういう状況をどういう風に考えていましたか? そうですね、僕が入団してからここまでショートに固定されたことがなくて、自分自身の情けなさっていうのもありましたけど、 逆に言えばまたチャンスがめぐっていたという状況でしたからね。 ポジションをつかみ取って、二度と手放さないために、ということをずっと考えてやっていました。 ――キャンプ、オープン戦を通じて藤本選手の考える課題というのは、打撃面だったんですか? いや、今までなら「バッティング、バッティング」という風に考えていたんですけれど、守備のミスからそれを取り返そうとして、 精神的にバッティングのほうまで空回りしてしまうという悪循環があったので、今年は守備にずっと重点を置いてやってきました。 ――開幕していきなり猛スパートでしたよね。 4月は打率.378、出塁率は.440で球団の月間最優秀選手にも選ばれました。 そこまで活躍できた原因というのは、どういうところにあったのでしょう? うーん、自分でも想像以上でしたからね(笑)。 どこがどうよかったのかっていうのは自分でも分からないんですけれど、いろいろな部分で、例えば守備なら守備っていうところで、 それぞれ意識が集中できていたのかなと思います。 とにかく「後がない」っていう危機感も強かったですし、開幕に出られたからといって、 2年目と同じように空回りしたらだめですからね。 ずーっと集中してやっていたのがいい方向に出たと思います。 ――そんな調子のいい時、5月の末に捻挫をして登録を抹消されるということもあったのですが、 やはりだいぶ焦ったんじゃないですか? そうですね、自分自身の中ではやろうと思えば全然できると思ってましたからね。 でも100%の状態ではないということで抹消されましたけれど、この10日間はかなり長かったですね。 ――しかし最短の10日間でまた戻ってきて、初めてのオールスターゲームにも出場することができました。 かなり緊張したようですね? そうですね、シーズン中以上に緊張しますね(笑)。 何やっていいのか、わかんなかったですし、今まで体験したことのない変な緊張感でしたね。 ――その後もずっとショートで出場を続けていたのですが、チームの調子がちょっと下向きになった8月には 藤本選手もすこし失速気味でしたよね? 夏を一軍で体験するというのが初めてでしたからね。 1年目はケガをしましたし、去年は下にいましたからね。 自分の中では別に疲れてなんかいないと思っていても、下半身のキレは全然ないし、自分の思っているポイントで打ったり、 自分の捕れるところで捕ったりというポイントが合ってなかったですね、チグハグで。 あの時はホントに辛かったですね。 ――そこから調子を取り戻せたきっかけは何ですか? どうですかね、とにかく体をリフレッシュさせないといけないですから、睡眠を多くとったり、いろいろ試しました。 がらっと変わるわけではないですけれど、体力的に徐々に取り戻せました。 慣れっていうのもあるでしょうしね。 ――今年は早くから優勝マジックが出て、8月は調子を落としながらも着実にその数を減らしていったのですが、 9月に入って優勝直前の神宮、ナゴヤドームの遠征では連敗(5敗1分)がありましたよね。 そうですね、周りからは優勝して当たり前って思われていますし、こっちとしては見えない重圧があったのかもしれません。 15日に甲子園に帰ってきた時には、ホントに「もうここで決めたい」って思いましたけどね。 ナゴヤとかはまだ「ここで決まんのかな?」という感じでしたけどね。 ――そして9月15日に優勝が決まったわけですが、横浜−ヤクルト戦の結果待ちでベンチからの飛び出し、 胴上げ、表彰、場内一周、場所を変えてビールかけと、あったわけですが、 藤本選手はどの瞬間がいちばん感動的でしたか? やっぱり優勝が決まった瞬間ですね、ベンチから飛び出した時。 アニキ・金本 ――ビールかけでは赤星選手と「打倒、金本!」の鉢巻きをして臨みましたが、あれは自分で用意したもの? あれはテレビ局の人が作ってきてくれて渡されたものなんです。 「これ、つけてください」って言われて。 ――今年の藤本選手といえば金本選手の名前が挙がるくらい仲がいいというか絡みが多いですね。 仲がいいって、先輩ですよ(笑)。 ――でも最初は藤本選手のほうから金本選手をイジりだしたというか、ちょっかいを出すようになったという話ですけれど。 どうですかね?初めはあんまり覚えていないですね。 初めて会った時は、それまでずっとテレビで見ていた存在の人ですから、 「喋りかけてもいいんかな?」っていう感じだったんですけどね。 ――いつの間にか...。 いつの間にかですね、ああいう風に。 ――藤本選手にとって野球選手として見る金本選手と、普段の絡み役としての金本選手はそれぞれどういう人物ですか? やっぱり野球においては尊敬もできますし、ああやって今、35歳にもなってああいう体つきですからね(笑)。 見ていて、いろいろ盗みたい部分もありますし、ああいう選手になれたらいいなっていうのがありますね。 あとはプライベートとのギャップが激しいというか、こんなに面白い人やったんやなーっていうのがありますね。 ホントにいいアニキ分という感じで...。 ――慕っていると...。 そうですね、尊敬できます...。 9.15 ――藤本選手は先日入籍を発表しましたけれど、9月15日でしたよね。 入籍のタイミングは前から優勝した日、というのを決めていたのですか? 初めは別に決めてなかったんですけれど、シーズン中はバタバタしますし「ちょっと待ってくれ」って言ってたんです。 なんか、ひょんなことから「優勝した時に(籍を)入れたらええんちゃう?」っていうことになって。 僕もちょっと余裕が出てきたし、シーズン中も結構、支えてもらった部分もあるし、「いいかなー」と思ったんですよ。 ――それはいつぐらいに決めたんですか? マジック20か、それくらいの時じゃないですかね。 そやから優勝のマジックも結婚のマジックも一緒やったんですよ(笑)。 ――入籍、結婚ということで精神的にも今年の活躍にだいぶ影響したんじゃないですか? そうですね、一人じゃないっていう意識はありました。 生活していかなければならないし、迷惑かけるわけにいかないですから。 ――藤本選手は前からファンが多かったのですが、今年は更にその数が大幅に増えたと思うのですが。 結婚したし、もうだめでしょ(笑)。 もちろん嬉しいことですし、何年たってもファンに忘れられない存在になりたいですね。 パッと忘れられたらショックですしね(笑)。 ――取材を受ける機会もかなり増えたんじゃないですか? そうですね。戸惑ってますけどね(笑)。 ――でも、前に比べると受け答えがスムーズというか、喋るようになったなーと感じますよ。 どうですかね。今までは結構いろんな人から同じことをよく聞かれたんで、こっちも「一緒のこと答えんとまずいんかなー?」 とか考えて、言葉を選びながら喋ってましたね。 来年に向けて ――今年のペナント・レースで藤本選手が個人的にいちばん印象に残った試合を挙げるとすればどのゲームですか? ボク的にはやっぱり開幕戦の第1打席ですね。 あれで勢いに乗れたというか、相手が左ピッチャーだったので、 「ここで打たんかったら、また使ってもらえへん!」って思ってましたし。 とにかく集中してその打席に向かったんですけれど、そこでヒットが出たっていうのは、 僕自身の中でホントにプラスに作用しましたね。 心の中では叫んでましたよ(笑)。 ――今年は優勝もできて、3割も打てたと。 それだけに来年以降、藤本選手に要求されるものも大きくなってくると思うのですが、 今年の反省点とかこれからの課題というのはどういう部分ですか? そうですね、一年間通しての体力がまだまだ足りない、ということに気づいたので、 また一から体力づくりをしていかないと、と思います。 それに前に金本さんに「この世界は、一寸先が闇や」って、また「一度3割打ったからといって、油断するな」って 言われましたしね。 その言葉はずっと自分の心の中に持っていますし、今年は今年で置いておいて、来年は来年でやっていきたいと思います。 もちろん自信にはなりましたけどね。 ――ちゃんとそういうシリアスなアドバイスもしてくれるんですね。 そうですね。 「広島の選手はもっと(バットを)振ってたぞ!」とか「阪神(の選手)は幸せやのー」とかずっと言われてますね(笑)。 |