藤本快進撃 驚異の打率.565
黒とオレンジのユニホームだけを、ジッと見つめていた。
1点を追う六回一死一、二塁の好機で阪神・藤本が打席に立った。
カウントは2―1から6球連続ファウル。
根負けして2球ボールを続けたシコースキーの、12球目のスライダーに、こん身の力を込めたバットがうなった。
右線フェンス沿いで右往左往するレイサムにいちべつもくれず、三塁まで突っ走る。
4万8000人の大観衆は、スタンディングオベーションで殊勲打をたたえた。
「鳥谷に負けるな」―。
そんな声援に「アピールなんて考えてない。アピールしても(レギュラーは)自分で決められない。
考えたのは、巨人が相手だということだけ」と答えた。
3打数2安打。打率・565と驚異の数字を保ちながら、この日は2盗塁も決めた。
「9番・DH」として打ちまくり、走りまくった。
オープン戦10試合で遊撃でのスタメンはたった3度。
不慣れな途中出場やDHで、“陰の首位打者”に立っている。
「僕は“ブリキ”なんですよ」と笑い飛ばす。
華やかな経歴のないメンバーが多かった亜大時代、監督からゲキを飛ばされ続けた。
「ブリキはいつも磨いていないと、光っていられない。今でも自分は“ブリキ”だと思ってます」。
1度磨けば輝き続けるダイヤモンドとは違う。そんな自分を誇らしく思う。
「去年は打席でもマイナスのことばかり考えていた。それが今年はプラスのことばかり。緊張感を楽しめる」。
レギュラーを守った昨季の経験が、“ブリキ”に磨きをかけた。
勝つべき相手は、鳥谷ではない。藤本は、連覇のためだけに自分を磨く。
その姿にファンは共感し、アンケートの「開幕ショート」で9割という“驚異的得票率”を呼んだ。
デイリースポーツonline3月15日付