藤本サヨナラ犠飛 満塁策砕く
初球だった。
10回1死満塁。藤本が、ためらいなくバットを振った。
前進守備の村松がやっと追いついた。
捕球したのを確認してスタートを切った三塁走者のアリアスが、勢いよく本塁を踏む。
選手がベンチから飛び出し、殊勲の背番号「9」に飛びかかった。
前打者の矢野は敬遠。
藤本に近寄った星野監督が、耳元で怒鳴った。
「結婚したばっかりなんだから、嫁さんにええカッコしてこい!」
リーグ優勝を決めた9月15日に結婚したばかりの26歳には、効果満点だった。
「打たなかったら、家に入れてもらえなかったかも」。
藤本は約4万8000人の観衆を笑わせた。
今季、打率3割1厘。140試合目に2安打を放ち、初めて3割打者の仲間に潜り込んだ。
敵地で連敗した後、星野監督が話した。
「あいつだけがシーズンと同じ振りをしとる。ものすごく大きな自信になっとるんやろな」
3戦目、負ければあとがない土壇場で、その藤本だけではなく、打線が「つながり」という本来の姿を思い出した。
1死からアリアスが3球ファウルで粘り、四球で出塁。「球をよく見ることだけを考えた」。
右前安打でつないだ桧山は「ジョージ(アリアス)が粘っこく塁に出たので、甘い球だったら行ったろう、と。
サヨナラ勝ちの確信? うまいこと、つながったしね」
苦しみ抜いた末のサヨナラ勝ち。
「サイコーです」。
照れ笑いする藤本の一振りで、虎は息を吹き返した。
asahi.com10月22日付